私たちが考える和解/仲直りとは?
私たちはこう考えます
「仲直り」を考えてみました
仲直りとは?
「仲直り」と言うと、普通は「喧嘩した後に仲直りした」というように、2人かそれ以上の当事者が、一度は好ましくない関係に陥ったが、その後に関係を修復する、という意味で用いられれることが多いですね。
私たちは「仲直り」を、もっと広く捉えています。
冒頭で掲げた良くない関係が元の仲に戻るというケースを「仲直りケース1」とします。そして次に挙げるような「仲直り」の姿も考えています。
仲直りケース2
★特に明確な問題があると思えないが、コミュニケーションが図れない状況です。
嫁と姑の関係で言えば、一見すると波風は立っていないのだが、お互いによそよそしく感じているというケースです。
こうした状況では、元々の関係は悪くなかったように思えるのに、一方が孤立したり、安心感を感じていません。
ですから、関係を築き直す場合、私たちは「仲直り」ではなく「仲治し」の意識で仲直りを支援します。
仲直りケース3
★一方が相手に自分を開示できずに、悶々と悩み続けるケース。
”一例としてガン患者が家族に悩みを相談できない場合”
ガン闘病中の患者は鬱になりやすく、人に上手く想いを伝えられないことがあります。同じ屋根の下に住む家族でも、互いにとても気を遣い、言いたいことが言えないのです。
治療の方針、お金のこと、等々、患者さんは不安や悩みを多く抱えています。
こうした不安の渦中に居る人と家族との橋渡しも仲直りとして捉えます。
仲直りケース4
★事業を子どもに継ぐ親と、引き受ける子どもとの対立のケースです。
”価値観や世代間の断絶が仲を壊してしまう事があります”
数年前に、話題に上った大きな家具屋さんのケースを記憶している方も多いでしょう。職人として叩き上げのお父さんと、一流大学を出てMBAを取得した子どもの価値観は大きく異なるのでしょう。
商売を肌で感じるお父さんと論理一辺倒で判断する子どもとは見解が異なる、・・・これは良くあるケースです。
同じ屋根の下で過ごした親子も価値観が異なると、それが嵩じて口を利かない関係になることも少なくありません。
こうした状況を緩和するには食事の席に着く「着席プログラム」も必要でしょう。
上記のようなケース以外に、周囲には色々な葛藤や対立があります。
「和解/仲直り」は幸せな暮らしの根幹です
誰かと対立している、仲が悪いという状況は、大きなストレスです。また普段は、それほど気にしない人でも仲違いしている相手に会う時や、その人の事が話題に上がると憂鬱になることがあります。
周囲の人と(家族や職場、そしてコミュニティで)良好な関係が保たれていれば、普段の暮らしは心が軽く、笑顔も出やすくはなるでしょう。
私たちは普段から「仲の良い友」を増やし、家族が、住民が、職場の仲間が「仲良し」になることが大切だろうと思っています。
「仲良し」の輪の中に居ると、私たちは他人にも親切にできます。仲良しの輪に居ると心が満たされるので余裕も生まれます。
経済的にも困難さが高まると言われる日本ですが、仲良しの輪に入っていれば生きて行けます。
仲直りは互いの良さも悪さも、強さも弱さも、長所も短所も受け入れ合い、尊重し合い、互いに愛情を注ぎ合おうとする人の美しい心根が原点です。
愛情の表現には勇気、パワー、謙虚さ、誠実さが必要です。
素直でなければ仲直りは難しく、時には恥をかくことも覚悟しなければなりません。そして仲直りの先には新たな自分自身の成長と、仲違いしていた相手との関係改善以上に得られる新しい世界との出逢いが待っているのではないかと思うのです。
仲直りへ向けたプロセスは多種多様です
ここでは簡単で、身近に感じられるケースと、それに応じた仲直りのプロセスを紹介します。
※親子で仲良く暮らしていたのに、或る事件で仲が悪くなったケース
50歳の智子さんは8年前に母を病で亡くしました。当時の母は67歳、父は70歳でした。父は若い頃から商社を営み、海を渡って海外と行き来していました。当時も母親の看病は一人娘の智子さんに任せて、ドイツへ良く行っては仕事に精を出していました。母の死に目に間に合わなかった父を、葬儀の後で詰る(なじる)娘に、父は黙ったままでした。そして智子さんは夫と2人の高校生の子が待つ家に戻り、その後はプッツリとお父さんとの行き来も、電話も無くなりました。
そして昨年、風の便りに疎遠だった父が闘病中で、余命も少ないという知らせが届きました。
78歳になった父の死期が近いことを知った智子さんは、それまでの恨みが消えて、父に会いたくなりました。
「このまま死に別れてしまうと、私は一生、後悔すると思ったんです」と後日、智子さんは言いました。
※智子さんは勇気を奮いました
私たちは相談を受けて、お二人の仲直りのプロセスを検討し始めました。そして、何度か実践して有効だったプロセスを智子さん親子の仲直りに当てはめて考えました。
それは、
先ず、双方(父と娘)にお母さんの死の後に、相手の身に何が起きたと思うか、を智子さんとお父さんに考えてもらうこと、(但しここでは智子さんはお父さんの想いを想像するだけです)
次に、双方は、その想いをどう受け止めたか、見えたかを考えてもらう、(ここでは智子さんはお父さんの想いを想像するだけです)
そして、自分と相手が何を想い、考えたかを書く、または声に出して言ってもらう、
ここまでは智子さんが未だお父さんに会う前ですから、智子さんの独り妄想ですね。
ここまでコーチが相談者の想いを整理し、深く聴いていると本人(ここでは智子さん)に気づきが訪れることがあります。
そして自分の想いを整理し、相手の当時の想いを想像の上であっても書き留めてみると、それまで見えなかった相手の置かれた状況や気持ちが、うすぼんやりと見えて来ます。
ここまでを整理すると、次のようになります。
1 当事者に何が起きたか?を確認する。一方の視点でも構いません。
2 次に双方が、その事実をどう見ているかを確認または想像し整理する。
3 その時の感情を確認する、書いてみる、想像する等。
智子さんの場合は、その後は次のプロセスを経ることにしました。
4 息子を仲介者にして智子さんがお父さんと食事をしたいと言っていると伝言させる。
5 お父さんからの返事を息子が智子さんに伝える。
6 娘と父が直に電話で話し、食事の日程と会場を決める。
7 実際に会って食事をし、・・・
智子さんは、いま未だ存命のお父さんと定期的に会って食事し、家事を手伝っています。
ここだけを読むと、何だ・・それだけの事か、とお考えの方もいらっしゃるでしょう。しかし智子さんは、この膠着した状態から一人では脱出することが出来ずに苦しんでいたのです。
仲直りのサポーターである関係改善協議支援士は、経験を通して様々なケースに対応するプロセスを日々、想像し創造することで仲直り支援の腕を磨くことが求められています。